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FPはやくもひろこの日々創造日記

2012年からamebroで『FPはやくもひろこの日々創造日記』を書き始めました。​

映画「国宝」を観てきました

話題になっている映画『国宝』を観てきました。

原作は未読です。

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《感想》


昨秋、十三代目市川團十郎白猿と八代目市川新之助の襲名披露公演を観に行ったこともあり、劇中に随所見られる歌舞伎の舞台裏にはとても惹きつけられました。


歌舞伎は、特殊な例を除けばほぼ世襲によって名跡が継承される世界です。


時々、例外もあります。

大名跡である市川團十郎、十一代目(七代目松本幸四郎の長男)は養子に入り襲名したものであり、十代目(九代目の婿養子)は死後に追贈されました。


四代目市川猿之助を継いだのは甥でしたが、今後おそらく三代目の血縁者から継承者が現れるでしょう。


一方、五代目坂東玉三郎のように、芸が卓越していれば世襲にとらわれず、自らが高く評価され重要無形文化財(人間国宝)になった例もあります。


とはいえ、実子がいれば基本的にはその子が名を継ぐのが通例のようです。



この映画を観て改めて感じたのは、世襲ならではの逃れられないつながりの重さや、強固な伝統ゆえの排除の厳しさです。


私たち観客は、舞台の色彩美や演技、踊りの妙を楽しみに行きますが、その「芸」の背景には、幼い頃から続く厳しい修練とプレッシャーがあることを感じました。


私がずっと応援している当代新之助は、2歳の時に初お目見えをし、将来的には海老蔵を襲名し、いずれ團十郎へと歩んでいくでしょう。

歌舞伎の家に男子として生まれ、そして親の跡を継いで一つの芸に人生を捧げていくには、結果として相当な覚悟と凄まじい意志が必要とされる生き方です。


映画の中で特に印象に残ったのは、『鷺娘』のシーンです。

雪の中で舞うその姿には、美しさと孤独、そして狂気すらもにじんでいて、圧倒的なエネルギーに満ちた場面でした。


血筋と芸、家と個、伝統と革新――。

何を捨て、何を継ぐのか。

その問いは、歌舞伎の世界だけではないかも知れません。


踊りや演技に関して、演者の方々の努力と献身がひしひしと伝わってきました。



私が少し気になったのは神社のシーンです。


神社とは、日本固有の宗教である神道に基づく信仰の場であり、穢れを清めて祈る場所です。

そこに「悪魔」という西洋的な概念の台詞が登場したことに、少し違和感を覚えました。


日本文化を題材とした作品の中で、何となく宗教観のずれのようなものを感じた点が惜しかったような気がしました。

「他には何も望まず、自分の宿願だけを果たしたい」

という凄まじい主人公の願いを表現するには、「悪魔」ではなく別の方法か台詞の方がより相応しかったように(素人ながら)感じました。



同じ女形という主題からは、中国の京劇を題材にした映画『覇王別姫』が思い出されました。

主役で素晴らしい演技をした故レスリーチャンが、強烈なインパクトを残した映画です。



「国宝」、久しぶりに見応えのある映画でした。



私は日本文化が大好きです。

発信出来る素材やコンテンツはたくさんありますので、是非更に掘り下げて映画作りに活かしていただけたらと思います。



国宝 予告



最後までお読みいただきまして、ありがとうございました!




早雲 裕子(はやくもひろこ)

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